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「100年後も受け継がれる強い想い」  ―洛陽総合高等学校100周年―

洛陽総合学院は本年、創立100周年を迎えることができました。
学院100年の歴史は、和裁洋裁の技術を教える学校から始まり、今に至るまで関係各位の弛まぬ努力と教育にかける情熱によって築かれてきました。
これもひとえに、地域の皆様、保護者の皆様、行政関係の皆様、そして創設者土屋せい先生をはじめ歴代の教職員と卒業生の皆様のご支援とご協力のおかげであります。まずは心より感謝申し上げます。

100周年記念行事の式辞にあたり、100年後も受け継がれる強い想い、ということについてお話したいと思います。

 その前に、まずここに集った皆様方にお聞きします。
 皆さんには人生をかけてやりたいこと、目指したい目標はあるでしょうか?
 あるという方もいることでしょう。まだ出会っていない人もいるかもしれませんね。では、どんなことなら、人生を賭けられるでしょうか?少し考えてみてください。
 もし、人生をかけてやりたいことがあるとして、ちょっと想像してほしいのです。
 今あなたが人生を賭けてもやりたいと思うことは、100年後、あなたがもしかしたら死んでしまった後でも、その想いを誰かが引き継いで、実現しようと思ってもらえるようなものでしょうか?

 100年前、本学院創設者の土屋せい先生は、人生をかけて成し遂げたいと強く思ったことがありました。
それは端的に言えば、「女性が自分の人生を主体的に選んで生きていくお手伝いをしたい」、「より良い日本を作りたい」という強烈な想いでした。

 大正時代においては、女性が自分の人生を主体的に選んで生きることは、ほとんどできなかったわけです。今のように職業選択の自由があったわけでもない時代に、女性が稼ぐ手段は本当に限られていました。しかしながら、土屋せい先生は刺繍裁縫の技術を体得していました。だからこそお金を稼ぐことができて、幼少期に父親が亡くなっても、結婚後に夫が亡くなっても、家族を支えることができたのです。そして同時に、自分の人生を選んで生きていくことができたのです。
 土屋せい先生は、「自ら考え、主体的に判断し、行動するために必要な資質や能力を育む」ための教育機関を作ることを目指されました。このことは立学の精神として、本校HP(立学の精神 | 最新情報一覧 | 洛陽総合高等学校 (rakuyo.ed.jp))でも詳しく書かれています。
 100年経った今でも、人生を主体的に選んで生きるための資質や能力を育むことは、全く色褪せることなく本校にとって一番重要な教育目標です。
 本校には、創設の際に書かれた趣意方針の書が残されています。そこには、当時の教育のあり方に対する疑念が書かれています。学生たちは、社会に乗り出すのに必要な知識も技能も身につけないままに、ただ漠然と学校に通って卒業した挙句、そこで自分の生き方に悩み改めて進路を定め直す、そのような状況があったと。
 それを読んだ時、衝撃を受けました。今もそんなに変わらないかもしれないと。そして私自身もまた、生徒たちが生きる理由を見つけられる学校づくりをしたいという強い想いを、改めて持ちました。土屋せい先生の想いは、時を超えて、私の心を動かしたのです。

 「世の中を良くしたい!」
 そういう人生を賭けた強烈な想いが、周りの人の心を動かし、時代を超えて社会を作っていくのです。
決して、自分だけの個人的な成功を強く願っても、きっとその想いは、誰も引き継いでくれないでしょう。

 ここにいる皆がそれぞれ、多くの人たちが共感し、100年後も誰かに受け継がれるような「人生を賭けてやりたいこと」を、ここ、洛陽総合高校で見つけてもらえたら、私自身それ以上の喜びはありません。
 本校創設者の土屋せい先生の、想いがあったからこそ、私たちは時を超えてこの場に居合わせています。これを機に「100年後も受け継がれる強い想い」とは何か、皆さんそれぞれ、考えてもらえたら嬉しいです。

 学院のますますの発展と、皆様のご多幸をお祈り申し上げまして、式辞とさせていただきます。

 令和6年6月14日 洛陽総合高等学校長 土屋智裕